記事更新日:2026年08月24日
記事公開日:2026年08月24日
統合報告書やIR資料をつくるとき、最後まで手が止まりやすいのが「価値創造プロセス」の一枚です。会社の資本・事業活動・成果・社会へのインパクトを、たった1ページに収めなければいけません。要素を全部載せると読めなくなり、削ると薄くなる。難易度の高い図です。
そこで今回は、スラデザに集まった実際のビジネス資料から、価値創造プロセスのスライドを「図の形」ごとに4つの型に分けて10枚紹介します。印象ではなく形で分類しているので、「自分が伝えたいのは流れか、循環か、実績か、世界観か」から逆引きできます。
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価値創造プロセスは、企業が中長期的に価値を生み出していく道筋を1枚で示した図です。国際統合報告フレームワークをベースに、多くの企業が次の4段構成で描いています。
資本からアウトカムへ伸びる線がタコの足のように見えることから、この形は「オクトパスモデル」とも呼ばれます。ただし実際の資料を並べてみると、全社がこの形で描いているわけではありません。同じ内容でも、何を主役にするかで図の形は大きく変わります。
本題に入る前に、この記事で扱う4つの型を整理しておきます。伝えたい主役によって選ぶべき形は変わります。
| 型 | 得意なこと | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ① 左→右フロー型 | 資本から成果までの因果を順番に追わせる | 統合報告書の中核ページ、初めて説明する相手 |
| ② 循環・サイクル型 | 成果が次の資本に還る「回り続ける構造」を示す | ステークホルダーとの共創、人的資本経営の説明 |
| ③ 数字で語る型 | 各段に実数を置き、絵空事に見せない | 投資家向け説明、実績のある事業の紹介 |
| ④ 世界観ビジュアル型 | 図解ではなくブランドの空気で語る | 採用・ブランド訴求、冒頭のメッセージページ |
インプットから始めて右へ順に読ませる、最も基本的な形です。段ごとに見出しの帯を置き、その下に中身を積む構造なので、要素が多くても迷子になりません。

株式会社商船三井の価値創造プロセススライドです。左→右フロー型の教科書と呼びたい1枚。上部に「01 Input」「02 Activity」「03 Output」「04 Outcome」の帯を段違いに重ね、右端を三角に尖らせて進行方向を示しています。さらにその上を「05 Strengthen and Circulate 資本の強化と循環」の帯がまたいで左へ折り返し、直線の流れに循環を足しています。全体の輪郭が右向きの巨大な矢印になっていて、海運会社らしく背景は濃淡2段の青。左端の行動規範だけを白い縦長の円で抜き、他と別レイヤーであることを形で分けています。

引用元:https://smarthr.co.jp/assets/pdf/well-working_story.pdf
株式会社SmartHRの価値創造プロセススライドです。同じ左→右でも、商船三井とは対照的に情報量をぐっと絞っています。上部の矢羽根は「現状分析→人的資本投資の推進→経営戦略の実行→SmartHRの創出価値」の4枚だけ。黒から水色を経て黄色へ変わるグラデーションで、左から右へ進むほど明るくなり、ゴールが黄色というだけで到達点だと分かります。最下段の「社会的価値」「経済的価値」の見出しには蛍光ペンのようなマーカーが引いてあり、この2つが結論だと示しています。左端は「理想の姿」と「課題」を上下に置き、あいだを双方向の矢印で結んだギャップ分析。フローの起点を現状把握に据えた構成です。

引用元:https://speakerdeck.com/schoo/schoo-for-business-inpakutorepoto2025
株式会社Schooの価値創造プロセススライドです。「社会の現状→ターゲット→アクティビティ→初期アウトカム→中期アウトカム→長期アウトカム」の6段。アウトカムを3つの時間軸に割っているのが特徴で、成果が出るまでの距離を正直に描いています。帯の色はグレーからベージュ、オレンジ、赤へと段階的に濃くなり、右へ行くほど熱量が上がる設計。各アウトカムには「KPI ①」「KPI 3,4,5」の黒い丸バッジが付き、最下段のKPI一覧と番号で対応しています。左半分は人物イラストで社会課題を描写し、右端には縦組みのキャッチコピー。図解とイラストが同居していますが、帯の位置が揃っているので構造は崩れていません。
始点と終点をつなぎ、回り続ける構造そのものを主役にする形です。「価値が一方向に流れて終わりではない」と伝えたいときに選ばれます。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20260331/140120260331594348.pdf
株式会社スペースマーケットの価値創造プロセススライドです。循環型の最も素直な形。細い線の大きな円をひとつ描き、その円周上にゲスト・ホスト・自治体・企業の4者を等間隔で配置しています。各者は丸くトリミングした写真で、脇の角丸ボックスには「今度はこんな用途でスペースを使ってみようかな?」といった一人称のセリフ。三人称の説明文ではなく当事者の言葉にしたことで、関係者それぞれの動機が伝わります。頂点にはロゴを円で抜いて置き、中心には「加速度的に成長可能」という結論。使っている色は緑ほぼ一色、矢印すらありません。

引用元:https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/sustainable/download/2024/value_report/all.pdf
積水ハウス株式会社の価値創造プロセススライドです。同じ円でもスペースマーケットとは狙いが違い、こちらは円の半径を時間軸に使っています。上半分の青が住まいの価値、下半分の赤が人財の価値。中心から外側に向かって「第1フェーズ 1960-1990年」「第2フェーズ 1990-2020年」「第3フェーズ 2020-2050年」と広がり、円が大きくなること自体が60年の成長を表しています。中心近くには線画のアイコン、外周には「省エネ・創エネ性能」「デザイン思想」といった具体的な取り組みをテキストだけで放射状に配置。右側の解説とフェーズの区切りが一致しているので、図と文章を行き来しながら読めます。

味の素株式会社の価値創造プロセススライドです。円をひとつではなく、∞(無限大)の一筆書きにした変化球。左のループが赤の「SCIENTIFIC POSSIBILITIES」、右のループが緑の「STORY OF WELLBEING」で、2つの循環が中央で交差しています。ループ上には①共創力→②生活者視点→③ウェルビーイング→④価値共創の4点が数字入りの丸で置かれ、どこから読むべきか迷いません。線は太いリボン状で、交差部分だけ色が混ざるグラデーション。左下には「策定のプロセス」としてSTEP1〜4の小さな図を並べ、この∞がどう作られたかまで見せています。図の作り方まで開示している資料はそう多くありません。
価値創造プロセスは抽象的な言葉が並びがちな図です。各段に実数を置くと、同じ構造でも一気に説得力が出ます。

引用元:https://www.ana.co.jp/group/investors/irdata/annual/pdf/25/25_00_1.pdf
ANAホールディングス株式会社の価値創造プロセススライドです。骨格は4段のフローですが、アウトプット欄の作りが他と違います。航空機数・マイレージクラブ会員数・グループ社員数・CO2排出量などをカード6枚に分け、それぞれに「2024年度末 278機 → 2030年度末 320機」と現在値と目標値を矢印で並べています。実績だけでも目標だけでもなく、両方を同じカードに置いたことで、進捗の途中であることまで伝わります。中央のビジネスモデル欄は大小の円を重ねた入れ子構造で、いちばん内側が「人の力×チームワーク」。最下部には全体を左へ折り返す矢印が走り、「人的資本を基軸とした価値創造サイクル」と明記されています。

引用元:https://group.kadokawa.co.jp/media/ir/media-download/1326/36ae38a6d2e0c950/
株式会社KADOKAWAの価値創造プロセススライドです。ANAが数値を等幅のカードで揃えたのに対し、こちらは数字そのものを図の主役にしています。右側の「主なアウトプット」は、書籍・映像・ゲーム・ニコニコ・スクール・施設の6事業を絵文字調のアイコンで示し、その横に「5,900点」「475万本」「242万人」と特大の数字。単位だけ小さくしてあるので、桁が視線に飛び込んできます。中央は経営戦略を表す3Dの回転矢印と、その下の事業活動を表すリング。左の経営資本ブロックから中央へ1本の線が入り、中央から右へ6本に枝分かれする構造で、資本が事業を通じて多方面の成果になる流れが1本の線で追えます。
箱と矢印をほとんど使わず、イラストと余白でブランドの空気ごと伝える形です。細かい構造は別ページに譲り、この一枚は「どんな会社か」を印象づけることに徹しています。

引用元:https://corp.shiseido.com/report/jp/2024/pdf.html
株式会社資生堂の価値創造プロセススライドです。載っている情報は他社と同じ6つの資本とビジョンなのに、見た目は完全にブランドブック。背景に淡いピンクとオレンジの太い曲線を流し、その上に手描き風の線画アイコンで6つの資本を円周に並べています。囲み枠も矢印もなく、資本の名前は細い文字で図の外側に添えるだけ。右上には人々が街で伸びをしているカラフルなイラストを置き、2030年のビジョンを絵で見せています。中央の「価値創造ドライバー」だけをブランドカラーの赤で太く組み、視線がそこで一度止まる設計です。全体の6割近くが余白で、統合報告書というより化粧品のカタログに近い佇まい。

引用元:https://www.hugp.com/resources/file/pdf/hugp_report_2024_j_HP_2.pdf
H.U.グループホールディングス株式会社の価値創造プロセススライドです。資生堂がイラストを図の一部に使ったのに対し、こちらはイラストで段組みそのものを作っています。ページを3本の帯に分け、それぞれをグリーン系・ブルー系・イエロー系の淡い背景で塗り分け、帯ごとに「予防・早期発見」「検査・診断」「予後・在宅医療」の場面を人物イラストで描写。文章は帯の左右の余白に流し込むだけで、罫線も箱もありません。人物の目線や体の向きが次の帯へ向かっているので、上から下へ自然に読み進められます。医療という硬いテーマを、白衣の人物と日常の風景を混ぜて描くことで、患者側から見た景色にしています。
今回は「価値創造プロセス」の高品質なスライドを10つ紹介しました。資本から成果までの因果を丁寧に説明したいなら①左→右フロー型、価値が還り続ける構造を主張したいなら②循環・サイクル型、実績で裏づけたいなら③数字で語る型、ブランドの空気ごと伝えたいなら④世界観ビジュアル型。載せる要素は各社ほとんど同じですから、何を主役にするかを先に決めて、それに合う型を選ぶと迷いません。
スラデザにはこのほかにも価値創造プロセスのスライドが多数掲載されています。実際の資料から探したい方は、下のボタンから一覧をご覧ください。
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