記事更新日:2026年09月30日
記事公開日:2026年09月30日
「赤は使いすぎるとうるさい」「背景を全面赤にしてはいけない」。資料デザインの話になると、赤はだいたい禁止事項とセットで語られる色です。
ところが実際に上場企業のIR資料や会社紹介資料を並べてみると、全面を赤で塗った表紙も、赤地に白文字を敷き詰めた本文ページも、普通に成立しています。うまくいっている資料は「赤を減らす」のではなく、赤をどれくらいの面積で、どの役割に使うかを先に決めているだけです。
この記事では、赤の使い方を5つの配色パターンに分けて、それぞれの特徴と使いどころを実在企業のスライド15枚とあわせて解説します。すべて実際の会社紹介資料・IR資料・統合報告書から集めたスライドです。
「もっといろんな赤のスライドを見たい!」と言う方は、赤のスライドデザイン一覧もご覧ください。
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赤系のスライドを大量に見比べていくと、赤の種類(朱赤・クリムゾン・ワインレッド・ピンクレッド)よりも先に、赤がスライドの何割を占めているかで作りが分かれることが見えてきます。
白地に数字だけ赤くする資料と、1ページまるごと赤で塗る資料では、必要になる技術も、向いている場面もまったく別物です。この記事では次の5パターンに整理しました。
| パターン | 得意なこと | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 白地×赤アクセント | 数字を1つだけ主役にする | 決算資料・KPI・本文ページ |
| 赤ベタ | ページの空気を切り替える | 表紙・章扉・ミッション・カルチャー |
| 赤のグラデーション | 熱量とブランド感を出す | 表紙・目次・カンパニーデック |
| 赤×黒・ネイビー | 硬い資料で1点だけ立てる | IR・中期経営計画・比較グラフ |
| 淡い赤の濃淡 | 攻撃的にせず階層をつくる | 図解・循環図・ドーナツグラフ |
それぞれ最初に紹介するのが、そのパターンのもっとも基本的な作り方です。2枚目以降で応用や変化球を見ていきます。
もっとも汎用性が高く、失敗しにくいのがこのパターンです。背景は白のまま、赤は「ここだけ見てほしい」という1点にだけ置きます。
赤は面積が小さくても強烈に目立つ色なので、白地に少量置くだけで十分に機能します。決算資料やKPIページのように、数字が並ぶ中で結論を1つに絞りたいときの基本型です。

引用元:https://speakerdeck.com/monotaro/monotaro-cai-yong-shao-jie-zi-liao-for-engineers
モノタロウの赤のスライドです。左のコピーは3行あるうち、赤いのは結論にあたる「16年連続の増収を達成」の1行だけ。前の2行は黒のまま置かれていて、読み進めた先で色が変わります。
右のグラフも同じ考え方で、実績の棒はすべて濃い赤、2025年の計画だけ淡い赤に落としています。折れ線はオレンジに振って、赤の系統だが同じ濃さにはしない、という整理がされています。左上の章番号バッジも赤で、ページ内の赤は「見出し・結論・実績」の3か所に限定されています。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20260213/140120260212557890.pdf
PRONIの赤のスライドです。グラフが3つ横に並ぶ情報量の多いページですが、濃い赤が使われているのは右端の折れ線1本だけ。積み上げ棒はグレーと淡いピンクで処理されています。
グラフの塊をグレー側に寄せておくと、赤い線が自然と浮かび上がります。同じ赤系でも、棒に使う淡いピンクは彩度をかなり落としてあるので、折れ線と混ざりません。3つのグラフのタイトル帯もグレーで統一されていて、色で目立たせるのは本当に1本だけ、という徹底ぶりです。

引用元:https://speakerdeck.com/mota_inc/mota-company-deck
MOTAの赤のスライドです。大きく置かれた「200%Growth!!」のうち、赤いのは数字の「200」と「%」だけで、「Growth!!」は黒のまま。1つの見出しの中でも、数字とそれ以外を塗り分けています。
棒グラフも同じで、過去の実績はグレーと黒、最新の1本だけが赤です。左側の解説文では「2倍」「43%」といった数字が黒の太字になっていて、こちらには赤を使っていません。赤を使う場所を「本文ではなく図版側」と決めているので、文章量が多いのにうるさく見えません。
「背景全面赤はNG」とよく言われますが、実際の会社紹介資料では普通に使われています。ポイントは、赤ベタのページを本文ページではなく、表紙・章扉・メッセージページに限定していることです。
白地のページが続く中に赤ベタが1枚挟まると、そこで話題が切り替わったことが一目で伝わります。逆に、全ページを赤ベタにするとこの効果は消えます。

引用元:https://speakerdeck.com/halu_japan/zshi-dai-siyotodoramaqi-dian-noci-shi-dai-xing-purodakusiyon
HA-LUの赤のスライドです。赤ベタ表紙のもっとも素直な作り方で、置かれているのは左上のロゴ、左下のタイトル、左下隅のコピーライトの3つだけ。画面の大半は赤のまま空けています。
のっぺりしないよう、背景にはわずかに明るい赤で波打つグリッド模様が入っています。ベースの赤との明度差はごくわずかで、近づかないと気づかない程度。赤ベタに柄を足すときは、この「言われないと気づかない」くらいが上限だと思っておくと安全です。

引用元:https://www.mipox.co.jp/dcms_media/other/FinancialResultsBriefing_2Q_FY2025.pdf
Mipoxの赤のスライドです。赤ベタの上に、これだけの文章量を白文字で乗せています。ふつうなら読みづらくなるところですが、成立しているのには理由があります。
ひとつは明朝体ではなくゴシック体を使っていること。もうひとつは、右の本文を4つのブロックに分けて、ブロック間を1行分以上あけていることです。左のキーメッセージは2行だけを大きく置き、その下に小さく要約を添える二段構え。赤地の上では、文字を大きくするより、行間を広げてブロックに切ったほうが読み進められます。

引用元:https://speakerdeck.com/aisaac/companydeck
アイザックの赤のスライドです。赤ベタを表紙や章扉ではなく、3カラムの情報ページに使っている一枚。ここまでやるか、と一本取られました。
カードは白ではなく、ベースよりわずかに明るい赤の面に角丸と細い枠線をつけて表現しています。中に入るSlackとNotionのロゴは、それぞれ黒板・白板を敷いてから乗せていて、赤地の上にロゴを直接置いていません。赤ベタの情報ページは、カードを白抜きにせず「明るい赤」で作るとまとまります。
赤は単色で敷くと硬くなりがちですが、オレンジやピンクへ流すと一気に華やかになります。表紙やカンパニーデックの冒頭で、熱量とブランド感を出したいときによく使われる型です。
ベタ塗りと違って、グラデーションは色の選び方を間違えると濁ります。実物を見ると、どれも赤の隣にある色(オレンジ・ピンク・黄)の範囲から出ていないのが共通点です。

引用元:https://speakerdeck.com/kushi/taian-company-deck-202411
TAIANの赤のスライドです。全面グラデーションの表紙としてもっとも基本的な作り方で、右上の赤から左下のサーモンオレンジへ、色相の移動を最小限にとどめています。
左上の隅だけ淡いベージュに抜けていて、これが画面に奥行きを与えています。直線的なグラデーションではなく、光源があるようなにじみ方をしているのがポイント。要素はロゴとタイトルの2つだけで中央に配置し、下半分は完全に空けています。

引用元:https://content.link-u.co.jp/irdata/news/ir-news_240315_02.pdf
Link-U Technologiesの赤のスライドです。TAIANが2色だったのに対し、こちらは左の白から、ピンク・赤・オレンジを経て右の黄色まで、横方向に大きく流しています。
色数が多いぶん濁りやすいはずですが、全体に細かいノイズ(粒子)が乗っていて、それが色の境目をぼかしています。文字は左の白〜ピンク寄りの、明度が高いエリアに置かれていて、赤が濃くなる中央には重ねていません。グラデーションの上に文字を置くときは、明るい側か暗い側のどちらかに寄せるのが定石です。

引用元:https://speakerdeck.com/fabrica_com/company-deck
ファブリカホールディングスの赤のスライドです。前の2枚が全面グラデーションだったのに対し、こちらは上下の帯だけにグラデーションを使い、中身は白地という使い方をしています。
目次ページなので、本文にあたる項目名は読みやすさが最優先。そこで帯にだけ赤→オレンジのグラデーションを置き、現在地の「01 企業概要」だけをグラデーションと同じ赤系に着色しています。これから話す項目はグレーの線画。グラデーションを帯に逃がすと、本文ページでも同じトーンを保てます。
IR資料や中期経営計画のように、硬さと信頼感が求められる資料で使われるのがこの型です。ベースは黒やネイビーといった無彩色寄りの色で組み、赤は比較の片側や結論の一語にだけ充てます。
白地×赤アクセントとの違いは、赤の相方に黒・ネイビーという強い色を置いていること。赤だけが浮かず、資料全体が締まって見えます。

ビジネスコーチの赤のスライドです。この型のいちばん分かりやすい形で、前年は黒、当期は赤というルールを3つのグラフすべてで守っています。
赤はクリムゾン寄りの落ち着いたトーンで、朱赤のような明るさはありません。目標値を示す点線の枠、注釈の吹き出しはベージュと、赤と黒以外の色はすべて彩度の低い色に寄せられています。3枚のカードが横に並んでも混乱しないのは、色の意味がページをまたいで固定されているからです。

引用元:https://pdf.irpocket.com/C4165/KKjE/x4Ic/YuWG.pdf
プレイドの赤のスライドです。ビジネスコーチが赤と黒を対比に使っていたのに対し、こちらは赤をグラフ本体に、黒をラベルにという役割分担をしています。
「連結売上高」「連結ARR」「連結」の3つのラベルは、いずれも黒地に白抜きの角丸。棒グラフは赤とオレンジの2色で、成長率を示す白い矢印バナーの中でだけ数字が赤になります。ラベルを黒で統一しておくと、赤の使い道をグラフと数字だけに温存できます。

引用元:https://corporate.jp.sharp/ir/event/policy_meeting/pdf/25meeting_j.pdf
シャープの赤のスライドです。数字がぎっしり並ぶ決算の表というもっとも硬い場面で、赤を文字と罫線だけに使っています。
表頭のFY2023はグレー、FY2024はダークネイビーと明度で年度を分け、赤いのはリード文の「二桁伸長」「営業赤字が大幅に縮小」という結論部分と、集計行を区切る細い罫線だけ。セル自体には一切色を入れていません。使われている赤もワインレッド寄りで、朱赤より2段ほど落ち着いたトーンです。
赤の「強すぎる」という弱点をいちばん素直に解決するのがこのパターンです。濃い赤を1つだけ残し、あとは淡いピンクレッドに落として、濃淡で情報の階層をつくります。
医療・ヘルスケア・カルチャーなど、やわらかい印象が求められる資料で多く見られる型です。図解や循環図のように要素が多いページでも、色数を増やさずに主従をつけられます。

引用元:https://speakerdeck.com/3sunny/companydeck-3sunny
3Sunnyの赤のスライドです。この型の基本形で、背景をごく薄いピンクにし、その上に白いカードを2枚置いています。白地に色を足すのではなく、薄い色地に白を抜くという逆の発想です。
棒グラフは左から右へ、淡いピンクから濃いコーラルレッドへ順に濃くなっていき、時間の経過がそのまま濃さになっています。背後の上向き矢印はさらに薄いピンクで、装飾だとひと目で分かる濃さ。ドーナツグラフは灰色とコーラルの2色で、20%のシェアだけが色付きです。

くすりの窓口の赤のスライドです。循環図という要素の多い図解を、ローズレッド1色の濃淡だけで組み立てています。
外側の循環矢印がいちばん濃く、内側の大きな円は極端に薄いピンク、その中のアイコン円は白。3段階の濃さが、そのまま「流れ>領域>個別要素」という情報の階層になっています。アイコン自体もローズレッドの線画で描かれていて、グレーや黒のアイコンを混ぜていません。中央の「事業拡大」だけが濃い赤の文字です。

matsuri technologiesの赤のスライドです。3つのドーナツグラフを、赤の濃淡だけで6段階に塗り分けています。年齢は6区分、性別は2区分、出身国は6区分と項目数が違うのに、同じ色のスケールを使い回しているのがポイント。
もっとも比率の大きい区分に濃い赤を充て、小さくなるにつれて薄くしていくので、凡例を読まなくても大小が分かります。数値ラベルは、濃い区分では白抜き、薄い区分では赤文字と使い分けられています。中央の「平均32.8歳」だけが黒で、ここだけ色のルールから外して主役にしています。
今回は「赤」の高品質なスライドを15つ紹介しました。
あらためて並べてみると、「赤は控えめに使う」という話ではまったくないことがわかります。1ページまるごと赤で塗った資料も、文字と罫線にしか赤を使わない資料も、どちらも成立しています。違いは、赤の面積と役割を先に決めてあるかどうかだけです。
| パターン | 得意なこと | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 白地×赤アクセント | 数字を1つだけ主役にする | 決算資料・KPI・本文ページ |
| 赤ベタ | ページの空気を切り替える | 表紙・章扉・ミッション・カルチャー |
| 赤のグラデーション | 熱量とブランド感を出す | 表紙・目次・カンパニーデック |
| 赤×黒・ネイビー | 硬い資料で1点だけ立てる | IR・中期経営計画・比較グラフ |
| 淡い赤の濃淡 | 攻撃的にせず階層をつくる | 図解・循環図・ドーナツグラフ |
1つの資料の中でも、表紙は「赤のグラデーション」、章扉は「赤ベタ」、決算の表は「赤×黒・ネイビー」、図解は「淡い赤の濃淡」というように、ページの役割ごとに型を使い分けると全体がまとまります。迷ったら、まず本文ページを「白地×赤アクセント」で固めるところから始めるのが安全です。
まだもう少し別のデザインを見たい!と言う方は、赤のスライドデザイン一覧も参考にしてみてくださいね。
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